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2019年1月10日木曜日

第2回 高橋店主のミニミニ自転車講座

明けましておめでとうございます。
新年の第3回ミニミニ自転車講座を直前に控え、前回のトーク全容です。
管理人と店主で苦労して文字起こしをしました。
分かりずらい表現等があるかもしれませんが、どうかご容赦頂ければ幸いです。
かなりな長文ですので、よく噛み砕いてお楽しみくださいませ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(2018年11月28日(木)@下北沢HANABI)
髙橋「こんばんは、マングローブ・バイクスの高橋でございます。
有り難い事に2回目を開催させていただきます。
ありがとうございます。

前回は皆さんに真面目に聞いていただいたので、今回はもうちょっとざっくばらんで結構です
飲み食いしながら、歓談しながら、BGM的に聞いていただければ結構でございます。

あとは何か気付いた事があれば、その場でご質問していただいても構いません。
話をしている内容の腰を折る質問でも構いません(笑)
いきなり「ディスクブレーキってどうなの?」とかでもいいです。
アットホームで行きたいと思いますので、よろしくお願い致します。

今日は2回目でテーマは「自転車って何?」って言うところを、広く浅くやってみたいと思います。

皆さんはブルべをされている方が多いので、自転車は常に傍らに置いて大事に愛でていらっしゃると思います。
かけがえのない相棒ですから、常に素晴らしい状態をキープされていると思います。

実は、自転車は自動車よりも歴史として見た時にはちょっと古い所があります。
今で言う「ストラーダ」や「キックバイク」的な形が自転車の始まりなんです。
自転車が生まれた当時は今のような庶民の乗り物ではなくて、ある程度領土を持った地主さんや上級階級の乗り物だったのではないかとも言われています。
自分の領土を馬ではなくて、もっと気楽な乗り物でって言うところもあったのではないでしょうか。

最初の自転車的な内容と言うのは諸説あるらしいのですが、1813年ドイツでドライジーネ型と言う自転車で、特製の前後同径の車輪にハンドル機能にあたる補助装置がついた物が発明されたのが始まりらしいです。
その後、1861年にフランスで開発されたのがドライジーネ型の前輪にクランクとペダルを付けて、要は三輪車の様な前輪が付いた自転車が開発されて、ミショー型と呼ばれるそれが初めて駆動装置を装着した自転車になるそうです。
それまでに意外と年数が経っているんですが、自転車と言う乗り物はあまり一般的でなかったということだということです。
ちなみに自動車が一般的に世の中に出て来るのは蒸気自動車が最初でした。
一番最初は軍用に使われた砲台を運ぶ為の自動車だったと言うのが調べると出て来るのですけれど、その後民生利用されたのがイギリスで定期バスに使われた物が1827年頃なので、自転車と大して変わらないんですよね。

1861年にそのクランク装置が付いた自転車がフランスで出来て9年後の1870年にペニー ファーディング型といわれる自転車でした。
これは、皆さんが知っているオーディナリーやダルマ自転車とかの前輪の大きい自転車のことで、イギリスで発明されました。
ダルマ自転車は当然前輪にクランク直結です。
あの形でブルべされてる方がいらっしゃるのですよね?(笑)
以前、知り合いからお写真を見せていただきました。

自転車の主流が「だるま自転車」になってからスピードの追及もされるようになり、前輪がどんどん大きくなり直径が2メートル近い車輪も開発されたみたいですね。
多分ですよ、その頃はやっぱり自転車も既製品になっていたと思いますのでプロモーションと言う目的もあったようで、自転車の有用性と機能性、スポーツ性を示すため、それからレースが盛んに始まったようです。

ただ、自転車自体は相変わらず中流階級以上の贅沢な要素のある物で、なかなか一般庶民が使われるまでには、まだ大分後になっての事らしいです。
そのオーディナリー/ベニーファーディング型自転車が生まれてから、後輪に駆動装置が付く自転車になるのが1879年で10年以上経ってからです。
その後、今の自転車の原型になるローバー型と言う自転車で、ローバーってメーカーを作ったのはイギリス人ですが、ちゃんと調べてないですが恐らく自動車のローバーに繋がるんじゃないかなと。
1885年にそのローバー型の自転車が発明されて、それが前後同系の車輪でチェーンでの後輪駆動の機能をもち、さらにそれはダイアモンド型のフレームを装備した自転車で、ローバー型が現代自転車の始祖になったそうです。

ちなみに1885年は、ドイツのカールベンツがガソリンエンジンを搭載した三輪自動車が発明された同じ年になります。
ですから、自転車は自動車が生まれたころに既に完成形に近い形であったわけで、とても優秀な乗り物なんですね。

その後、今皆さんが乗られている自転車の空気を入れるタイヤですが、スコットランド人獣医師のジョン・ボンド・ダンロップさんが空気入りタイヤを開発したのが1888年です。
翌1889年には既に現代とほぼ同じ構造の自転車用クリンチャータイヤを完成させていました。
そして、皆さんが目標にされてるPBP(パリ・ブレスト・パリ)が始まったのが1891年です。
空気入りのタイヤが発明されて快適性や速度の向上が飛躍的に進歩したんですね。
タイヤの向上は車輪を使う乗り物としての質も向上したというところで、自動車に限らず自転車の性能も向上してくれました。

ちなみに年表で言うと、トライアスロンの初開催は1974年アメリカのカリフォルニア・サンディエゴで、46人の選手が出場したそうです。

軍でやった話と言うのは1978年ハワイ・アイアンマンの元になるんですけど、実は前年にハワイのアメリカ海軍の軍人達の宴会席上で「バイクとランとスイムとどれが一番過酷なんだ⁉」と議論になり、それじゃあ競技として全部まとめてやろとなったのが翌1978年から始まったアイアンマンレースで、トライアスロンはその後いくつかの距離区分が出来てオリンピック種目にもなり、競技色がより濃くなっていきます。

トライアスロン初開催と同じ1974年、実はMTB(マウンテンバイク)もそこから始まってるんですね。
ゲイリーフィッシャーさんがヒッピーだった若かりし頃、当時は今の様に大金持ちではない時ですけれど、当時アメリカには自転車と言えば一般的にはビーチクルーザしかなかったのです。
シウュインのビーチクルーザーが庶民の乗り物でしたから、それを廃材置き場で拾って来て、同じ廃材置き場にあったオートバイの古部品と組み合わせて、山下り用の自転車を作って楽しんでいたのがMTBの始まりです。
当時それをクランカー号と言っていて、クランカーとはガラクタって言う意味なんですね。
ジョー・ブリーズとトム・リッチーはMTB草創期の仲間で、1977年にジョー・ブリーズが、翌1978年にはゲイリー・フィッシャーがブランドを立ち上げ、その後ロードレース仲間で同時に優れたフレームビルダーでもあったトム・リッチーもブランドを立ち上げ、そこからMTBは自由な発想で発展していき現代自転車全体に影響を与えるようになります。

ここで変速機に関して言うと、リアスプロケットが連なる外装変速機よりもリアハブの中に歯車の詰まった内装変速機の方が出生が早かったそうです。
1939年に、これもイギリスです。
産業革命を機にイギリス人は発想・発明に優秀なんですね。
自転車に関してもイギリス発祥が多いみたいです。
ちょっとマニアの方は知っていると思いますが、スターメアーチャー。
今は台湾の会社になっていますけれど、AW3 内装3段変速機ハブが同社の傑作品と言われています。
このAW3は、現代の一般軽快車(ママチャリ)で使われているシマノの内装3段変速機ハブにも繋がる構造なのです。

外装変速に関してはカンパニョーロ等諸説あるので、今回は調べていないので割愛します。
ただフランスでもサンプレとかユーレイ、スペインのゼウス等、今ではあまり聞かなくなったりブランドが無くなっちゃったりしたものもありますが、サンプレなんかは昔の自転車だとタケノコばねと言う板バネをつるまき状にしたものを後変速機に仕込んで、専用の台座に装着していましたから、今の後変速機みたいにフレームにボルトオンでの装着がすぐに出来なかったんです。
これはフレームを専用に作らなくてはならなかった変速機だったので構造も独自で変速機に仕込んでいるバネはチェーンのテンショナーとしての機能で変速の送り戻しはそれぞれに専用の変速ワイヤーを用いました。
前変速には上方に長く伸びた変速棒でパンタグラフを直接操作して変速していました。
現代のような変速ワイヤー1本で操作するバネ式パンタグラフ構造の前後変速機が出現するのはカンパニョーロ・グラン・スポルトまで待たなくてはならず規格も今程統一されてなかったですし、STIやエルゴパワー等の手元変速システムが出現することなど夢物語で古くは時代時代が激動でした。

サンプレとかユーレイの古い変速機の付いた自転車を見るんでしたら、トーエイ自転車の特集本みたいのが何年か前に出ています。
1冊3~4千円するんですけど、それを僕持っているんですけれど。
図書館に行ってもないかもしれないけど、ちょっとツーリング車とか詳しい自転車屋さんならあるかもしれないので、ご覧になるといいです。
トーエイ社は面白いんですよ。
ポルシェみたいにオーナーさんの名前とフレーム番号を全部管理しているみたいで、行先とか出所が全部追っ掛けられて面白いんです。
そう言うメーカーさんは優秀ですよね。

さっきPBPのお話しをしましたけれど、ツールドフランスの始まりは1903年。
PBPから10年足らずで始まっているんですよ。
第一次大戦で1915~1918年と、第二次大戦で1940~1946年は大会が中断していますけれど、今年で105回大会になりました。
Team SKY のゲラント・トーマスが今年(2018年)は優勝しましたけど、本当はクリス・フルームが5勝目を狙っていたと思います。
今まで5勝クラブは4人しかいません。
本当はもう一人7勝した選手がいましたが、ドーピング違反で記録抹消になりました。
5勝クラブの4人は古い順から、フランスのジャック・アンクティル、ベルギーのエディ・メルクス、フランスのベルナール・イノー、スペインのミゲル・インデュラインで、一時代をそれぞれが築いた偉大な選手達です。
いまだにツール・ド・フランスではゲストとしてセレモニー等で目にする機会がありますが、インディュラインは一時ちょっと体が僕みたいに大きくなりましたけど、最近は露出が増えているみたいで絞っていますね。
インデュラインと言うと僕の中では流麗なピナレロの自転車に乗っているイメージがあって、スチールフレームから最盛期にはアルミフレームに移って、カーボンフレームの実戦投入時にはタイムトライアルでよく使われていましたが、今程UCI(国際自転車連合)の車両規定がうるさくなかったので、ピナレロ・パリジーナなんていうブーメラン型のフレーム形状を自転車に用いた非常に優雅な自転車がツールドフランスを走っていました。

ディスクホイールに関しても意外と幅の規定がなくて、ロシアのエフゲニー・ベルツィンがゲヴィスビアンキ時代ににフランスのフィールと言うリムメーカーが作ったディスクホイールを使ったんですが、それはフロントのディスクホイールなんですけど、深めの洗面器を2個互いに重ねた様な横幅が広いディスクホイールを開発したんです。
何でそんな形なのかというと、クランク周りの回転部をディスクホイールの前面投影面積で隠しちゃおうっていう解釈で、エアロダイナミクスを考慮したと思われるって言っているんだけど、本当に?と思う突飛で奇抜な形のものでした。
当時は前輪が小さく後輪の大きい前後異径のタイムトライアル車が主流で、総称では一般的にファニーバイクと言われ、時々で工夫を凝らしたまさに奇妙な自転車だったのです。

機材の事で言うと、ベルナール・イノー時代のツールドフランスは毎回機材に対して実験的な出来事があって、今年は何が出るかな⁉と結構楽しみでした。
今では当たり前なディスクホイールやエアロヘルメット、エアロスーツ、アイウェア等もこの時代にトライされ始めた機材です。
最近はフレームもディスクホイールも市販のものを選手が使う時代でもあります。
そうは言っても発言力のあるエース選手では、実は中身が違ってたりするみたいですね。
今は一般的にエアロダイナミクスと言われるジャンルも、発想当初はクランクを薄く削るとか角を面取りするような事でもエアロダイナミクスと言われました。
それとフレームもスチールの時代が長かったですから、単純に丸パイプを万力でつぶしてエアロダイナミクスと言ってた時代もありました。
今でこそエアロバイクなんて専用の楕円シートポストの使用がほとんどですけど、当時はシートポストも上半分だけ楕円なので、背の小さい人はその楕円の所がちゃんと出るようにフレームをわざとシートチューブ長を短くして、その頃から若干のスローピングフレームでした。

エアロダイナミクスの前はエディ・メルクスの時代で自転車の軽量化が使命だったので、何かれ構わず部品全部にドリルで穴をあけて軽量化をしていました。
チェーンリングの穴あけはエディメルクス時代の軽量化の最たる加工で、カンパニョーロの変速機でも穴をばかすか開けていました。
そんな経緯が最新のカンパニョーロ・スーパー・レコードの穴あきに見られる名残なんです。
素材が段々移り変わる事で軽量化に関しての「穴あけ」は段々歯止めがきく様になりましたが、いまだに軽量化は永遠のテーマだと思います。
ただ、いたずらに軽いと基本的には弱いんですけどね。

現代の自転車は素材がどんどん進歩して安全性を保ちながらの軽量化も実用的になりましたが、ロードバイクを含めて今もUCIの車両規定では自転車の最低重量6.8㎏と定められています。
装備が豊富になってパワーメーターやらディスクブレーキ、ディープリムのホイールがついても6.8㎏。
それがミニマムとして達成出来ています。
6.8㎏以下になると錘を積まないといけません。

昨日僕は前橋競輪場で競輪選手の競技大会のメカニックに行って来ました。
競技種目によってトラックレーサーにDHバーを装着するとハンドルの持ち手が4か所になるので、自転車はDHバーを付けると重くなるんです。
DHバーを付けた状態で6.8㎏の車体で、DHバーを使えない競技でドロップハンドルに交換したとします。
ドロップハンドルバーも競輪で使われる鉄ハンドルでは心配ないのですが、カーボン製のドロップハンドルバーではハンドル周りの変更で確実に自転車が軽くなってしまうので、シートポストを抜いてフレームの中に錘になるスパナ等を入れる事を本当にやります。
乗っている時にカタカタいうのは選手も気になるので、ウエスを巻いたスパナを中に突っ込んで、そうやって重量合わせをします。
ひと昔、キャノンデールがシステム6を作った時に軽くなり過ぎちゃったから、ボトル台座の所に板おもりを選手の為に作って何枚かを挟み込んでと言う事を実際やってましたね。
ちょうどその時代がダミアーノクネゴとかシモー二の時代でしたが、広告ではフレームに天秤の分銅をいくつか固定してフレームの軽量性をアピールしていました。

自転車は色んな部品から出来ていますけど、フレーム・ホイール・ハンドルバー・ステム・サドル・シートポスト・制動装置・変速装置、そういうものから成り立っています。
それぞれに役割があり、使用目的によって拘りがあるでしょう。
フレームでは最近は一時程スチールスチールって言わなくなりましたけれど、スチールフレームに関していえば最新の材料(パイプ等)がいまだに出ています。
何故かと言えば日本には競輪がありますので、競輪選手の自転車は日々進化させる努力を怠っていません。
その注文に応えるべく、自転車を作ってるフレームビルダーさん達が知恵を絞って頭ひねって苦労されています。
それは材料を供給するパイプメーカーさんも同じなのです。

競輪はカーボンフレームが使えないのかと言うご質問ですが、競輪に関して言えば現在のガールズケイリンではカーボンフレームを運用して開催しています。
女子競輪は始まった趣旨が世界で戦える女子選手を作り育成しようというのがそもそもの目的だったので、UCIの車両規定・競技規則、そういうものにのっとって運営されています。
ですから統括団体も男子の競輪とは別の組織で、車両に関する開発(開発はメーカーさんがやるのですが)や認可を取るのに車両の検査・試験を個別にします。
女子競輪で使われるカーボンフレームは男子が使う鉄のフレームと同じ項目で検査・試験をやります。
早い話が、どう言う構造になっているかぶった切って輪切りにしたり、縦割りにしたり、破壊試験をしてどれぐらいの強度でぶつけたら壊れるか、そういう事をやってフレームを壊して検査・試験します。

男子の競輪は何でカーボンフレームが使えないかと言うと、早い話が賭け事は着順が決まればいい事なんで、カーボンフレームである必要性はないんです。
それでも、鉄のハンドルとアルミのハンドルのどっちを使おうか等の違いは当然あるので、それは選手個人で認定部品の範囲内で決めます。
競輪の場合は上り坂がないですから、軽い自転車が正義とは限らないんですよ。
それと競輪は、よーいドン!ってなってからは全力じゃないんです。
ある程度の周回数までは一定ペースで周回を重ねて、そこからフライング状態でレースが始まる事になりますので、軽くない自転車でも惰性が付いてしまえば勝機を得る事が出来ます。
自転車に関する不思議の一つで、軽いから良いとは限らないのですね。
実際に競輪の鉄ハンドル、ビックリしますよ500gより重いんですから。
私の使っていたクロモリのハンドルは580gあります。
580gと言うと、ちょっと軽く作ったロードバイクのクロモリフォークぐらいですね。
ちなみに競輪用のクロモリフォークはさらに重いんですよ、780gあります。
競輪ってね、落車した時に乗り上げ落車ってやつがあるんですよね。
前に選手がバシャって転んじゃって、避け切れなくて突っ込んで落っこちちゃう。
痛いですよ、一回転して一本背負い投げになるので、酷いと横突起骨折とか骨盤やっちゃう事もあります。
その時に自転車が壊れるのはフォークが曲がると思うでしょ、皆さん。
曲がらないんですよ、全然。
フォークが曲がらないで、ヘッドチューブの付け根がグンっと入っちゃうんですよ。
僕もね、3本くらい壊してます。
そういう転び方をした時は意外と自転車が衝撃吸収してくれてるんで、怪我は少ないです。
僕もレース中に鎖骨骨折と肋骨骨折した事ありますけれど、そういう時に限って自転車はサドルがちょっと傷ついてるだけとか。
競輪は鉄フレームを使っているが故に損傷も表立って確認ができますし、それが安全確保につながります。

ただし、そうはいっても機材の進歩は自転車競技の方では目覚ましいものがあります。
女子競輪で使っているカーボンフレームを男子が使ったとします。
そうすると200mのフライングダッシュ、助走をつけた200mタイムトライアルの時に1秒違うんです。
1秒と言うと、競輪の世界では10車身です。
圧倒的な差が生まれます。
最近の世界選手権とかワールドカップだと、世界のトップのレベルは200メートルTTが9秒4~5とかでビックリします。
世界選手権10連覇の中野浩一さんがV10の時にスプリント予選TT 10秒57(WR)だったことを考えると、当時の中野さん走りの10車身以上も前方に今の選手は位置することになります。
身体能力の向上と共に自転車の基本性能の向上は明白です。
そんな外国人選手が実は日本の競輪にも参加するんですよ。
短期登録選手として各年に半年程、日本の選手と「競輪」を走る事があります。
日本全国から斡旋があるので、その機会にはちょっと興味を持って観てください。
YouTubeでもいいですね、PCでも競輪.JPからダイジェストで観られますので、外人選手の強さをちょっと垣間見れると思います。
どんな外人選手が来るかと言うと、オリンピックのメダリスト・ワールドカップのチャンピオン等、実績のある選手ばかりです。
最近調子がいいのは、前回のリオ五輪銀メダリスト、オランダのマティエス・ブフリ。
開催初日から1着の量産体制で、まさに荒稼ぎしています。
そんな選手でも日本での「競輪」ではカーボンフレームではなくBSのNJS認定鉄フレームに乗ります。

さて、カーボンフレームの話に戻りますが。
先程もお話したとおり昨日は前橋競輪場へカーボンの自転車を使用する競技大会に行っていましたが、この大会はスポーク組みのホイールを使用するのは、ケイリンとエリミネーションでの前輪使用以外はほぼ皆無です。
日本のケイリン競技では前輪は競輪での車輪を使うというローカルルールがありますが、世界の方のKEIRINでは、もうスポークホイールは一切使っていないです。
全ての選手は後輪がディスクで前輪はバトンホイールです。
バトンホイールと言うのは、車輪を支えているスポークに当たる支柱が5本だったり4本だったり3本だったりしますが、KEIRINでは概ね5本が多いです。

自転車の値段で言うと、LOOKのフレームで前後共にMAVICのホイールを付けると、日本で買うと大体250万円以上かかります。」
お客様「そうしたら高橋さんの手組ホイールの仕事が無くなっちゃうんじゃないですか?」
髙橋「実は全国プロ自転車競技大会に関東チームのメカニックとして昨年(2017年)から行っているのですが、そこへ行くと車輪調整の仕事がほとんどないのです。
ケイリンとエリミネーションでの前輪以外スポーク車輪を使用していないので、振れ取りの仕事がないのです。

言いたい事は概ね余計な事も言いながらお話ししましたので、ではここで一旦トイレ休憩を挟みます。
休憩中に質問ノートを回しますので書いてくだされば、後半でお答えします。
こんな事聞いてもいのかな?と言う初歩的な内容でもいいです。
わからない事をわからないままにしておくのはもったいないですし、こんな事もわからないの?なんて言いませんのでご心配なく(笑)
誰でも最初から知っている人はいないので、僕で答えられる範囲ですが何でも聞いてください」

Q「今質問していいですか?インフィニティーのサドル(枠だけのもの)を今考えているのですが、どうですか?」
髙橋「僕も座った事がないので何とも言えないのですが、身体を支える部分が少ないと言うのは感じ方が日によって違う事が最初の内はあるんじゃないかと思います。
特にサドルは【サドル沼】と言われる程、合う・合わないということを早計に考えずに、まず今まで使用しているサドルと新しいサドルを交互に使用してみる気持ちでトライしてみると理解が出来るのかなと。
例えば毎日通勤されるのであれば1週間毎にサドルを交換するとか。
いきなりブルべで使用すると途中でサドル交換は出来ないと思うので、余程PCで誰かサポート隊がいるとか、サドルを持って走ったり。
ただしシートポスト毎替えないとめんどくさいですから。
まず最初は腰掛けてみて、第一印象がいいか悪いかそこはすごく重要だと思います。
基本的に世の中に出ているサドルは概ねどんなサドルでも座れる場所ってあるんだと思うんですよ。
ロードバイクにママチャリのサドルを付けろって言われたら、僕は付けられます。
ブルックスのB17をキャノンデールのスーパーシックスエボに付けろと言われたら出来ます。
実際に付けて乗っていただいた事があります。
その方は、皮サドルって悪くないね!とちょっとにんまりしていました(笑)
試しにそう言う事もやれるということです。
サドルに関してはちょっと中期的に取り組んでみるのが理想でしょうね」

Q「PBPに対して長距離で摩擦がちょっと・・・」
髙橋「僕も今お使いのSMPサドルを使っている経緯がありますが、股に空間があるのは非常に涼しいです。
通気性がいいのと、圧迫が逃がせる所もあるのでメリットは大きいかなと思います。
ただそうは言っても身体を支えられる要素を作ってあげないといけないです。
あとはペダリングに対してどれだけ身体を持ち上げる反力があるか。
自転車ってペダルを踏まないと進まないですよね。
ペダルを踏む力に対しては作用でしょ。
反作用としてペダルを押し返して来る力も生まれるんですよ。
これは中学生の物理の作用反作用の理屈です。
その時にちょっと重いギアを踏んでもらえるとわかるのですけれど腰がくっと持ち上がる感覚がありますよね。
膝に圧力がかかって持ち上がる感覚が上半身を持ち上げたり、サドルの圧力を抜いてしまう力になるんです。
それを上手に使う事。
あまりクルクルとペダリングのケイデンスを早くして踏むのはサドルにしっかりと座っていないと出来ない事なので、ケイデンスが高過ぎる程摩擦が増えて股のトラブルが多いはずです」

Q「ケイデンスは早きゃいいってもんじゃないのですね?」
髙橋「そうなんです。
では何で100回転で回すんですか?
ちょっと前に100回転とか120回転とか言わてましたけど、何でですか?って言うのを僕は聞いてみたいです。
そう言われているからってやるって方が多くいます。
じゃあ100回転が自分にとって合ってるって、多分捉えてないと思うんです」

Q「心拍が上がるだけですね」
髙橋「そうなんです、心拍が上がるだけです。
僕はケイデンスで言えば、長距離走る方は70~80回転でいいと思います。
何故かと言うと、一回転で両足で2ビートでしょ。
140~160回転になる訳ですよ。
その間、心拍が一番効率がいいと思うので」

Q「その分、重いギアじゃないとですね」
髙橋「若干です。
だから重いギアを踏むと言うと筋力を使うんじゃないかと思うじゃないですか。
でも皆さん体重があるでしょ。
ペダルを踏むんじゃなくて、ペダルに乗ると言う事です」

Q「ポジションの出し方を教えてください等の大き目なテーマの講座を設定してください」
髙橋「そうですね」
お客様「お店に行かないと!」(笑)
髙橋「ポジションに関して目安としては、皆さん足をつきやすい高さではもう乗ってないと思います。
漕ぎやすい高さを目安にしてもらいたいんですよ。
クリートの位置ともサドルの位置とも関連性があるので、サドル位置が正しくなってくればある程度サドルの高さが出て来ます。
大きなヒントをお話しますが、サドルの高さって自転車の横に(運動靴で結構ですので)立った時に骨盤の横のぐりぐり(出っ張り)があるでしょ、この高さがサドルの大体の高さなんです。
フィッティングを重ねていくと概ねそこになる事が多いです。
サドルの角度は、サドルの長さを鼻からお尻の方まで大体三等分した所の先端から三分の二(後ろから三分の一)の所が水平基調になる様な、後ろはちょっと跳ね上がる位の角度が大概のサドルは使いやすいと思います。

前後の合わせ方は、左足前足の時のクランクが3時の位置で水平ですよね。
その時のペダルの軸の中心が、左足の膝のお皿の後ろを通る位置です。
これは結構色々な所に出ています。
ただしそこにおいてどこが重要かと言うと、大腿骨の長さなんです。
大腿骨の長さは皆さん固有で違いますよね。
足が長い方はサドルが後ろにないとだめですよね。
逆に背の小さい方は大腿骨も短いですからサドルは前進することになります。
自転車の設計に限らず、サドルの前後位置と言うのはここですよって言うのは、皆さんの固有の骨の長さがありますから大腿骨の長さから分かって来ちゃうんですよ。

大腿骨の長さは膝から股関節まで、股関節から骨盤につながりますますよね。
骨盤から座骨の位置って分かりますよね。
そうするとサドルの座りたい所と座っている所の現状のズレというのが理解出来るんです。
座りたい所と座っている所の一致を目指すのが理想です。
ただその為にはクリートの位置関係も関連して動くので、そこを一緒になって追い掛けて考えないとならないのです。
これをお店でフィッティングとしてやる方は色々な世間話をおしゃべりしながら、あっと言う間に2時間過ぎます(笑)

お客様「来てもらった方がいいですよ!宣伝した方がいですよ!!」(笑)
髙橋「ポジションセッティングは有料でやていますけれど、非常にリーズナブルですので。
初回は5千円・リピートは3千円ですので、安かろう悪かろうではありません!
是非、いらしてください」
お客様「色んな話聞けますから、是非どうぞ!!」
お客様「私も行きました!」

髙橋「経験されてる方も何名かいらっしゃいますので、興味があれば。
2か月先位まで週末は埋まっているので、余裕を持ってご連絡ください。
平日でしたら1か月先でしたら空いています。あとは何か質問がありますか?」
司会「質問すると1を100にして答えてくれるので、是非」

Q「次のブルべの走行予定はいつですか?」(笑)
髙橋「全く白紙でございます!」(笑)


~~~~~~~~~~休憩~雑談~~~~~~~~~~∼


司会「そろそろ質問コーナーへ移ります。書いていただいてありがとうございます」
髙橋「頑張りまーす!」
司会「酔っぱらいながらでも聞いていただきたいと思います」
髙橋「BGM程度で!」(笑)

司会「SMPのパクリサドルをどう思われますか。あまりに安いので試してみたい気がしますと言う質問です」

髙橋「コピー商品とかフェイクとか自転車の部品に限らず色々な物がありますけれども。
SMPだけに限定してお話しします。
SMPサドルはメイド・イン・イタリーと会社自身で大々的に謳っているサドルメーカーです。
皆さんがよくご利用される海外通販でもそんなに割安感がないはずです。
意外と高いサドルの代名詞的な事で取り上げられています。
偽物と言うのをご自身で十分わかっていて使われるようでしたら、使ってもらうしかないです。
じゃあそのサドルを使ってみて、SMPってこんなもんかと思われると、また本物は違うと思うんです。
偽物のSMPがどの程度本物を再現しているか、そこはちょっと僕もわかりません。
やはり身体に一番近い部品ですので、サドルに関しては出来たら誰かから借りてみるとか、お店によってはテストサドルがありますので試してみてください。
奇抜な形だからこそ、本物に触れる事を工夫してみてください。

SMPもベースの違いが3種類あります。
後ろが跳ね上がってないサドルもあります。
パッドの厚みもそれぞれ何種類かあります。
長距離走られる方・短距離の方、そう言う所で相応しいサドルが違って来ます。
男性と女性でもSMPに関してはサドルの差が大きいです。

SMPのサドルがどう言う経緯で開発されたかと言うと、整形外科医さんが設計に関わっているサドルです。
僕は選手になってすぐ腰を悪くしました。
身体の調子が悪い時は、腰の姿勢を保つのに苦しい時がありました。
今はお腹が出ているのでもっと苦しいですけど(笑)
でもこのサドルは骨盤の角度を制限してくれるサドルなので、崩れる事を抑制してくれるのが、このサドルのいい所です。
正しい姿勢であるならば、正しいセッティングでその姿勢を保ちやすいサドルです。

また、SMPサドルを使う場合はシートポストも重要です。
サドル自体が重要なのは当たり前なのですが、SMPサドルはシートポストのやぐらの調整機能が重要なのです。
最近だとフレームに大してシートポストが専用設計になっているものもあるので、ノッチでしか角度を調節出来ないものもあります。
そうなると角度に関して高さで微調整をしなければなりません。
丸いシートポストを使っている方はシートポストも一緒に交換を考慮した方がセッティングがわかりやすいです。
どっちみちちょっとお金が掛かってしまいますね。

SMPをフェイクで使われても構わないと思いますが、本物を使う努力をされた方が僕は賢明に思います。
僕は立場上そう言わざるを得ませんので、ご理解ください(笑)


司会「ロングライドやヒルクライムに耐えられる足腰を手に入れるには、どんなトレーニングをすればいいですかと言う質問です」
髙橋「ロングライドに関しては皆さんの方は長けていると思うので割愛したいのですが。
自転車って反復の動作じゃないですか、ですからやっぱり絶えず取り組むのが最善だと思います。
僕がアマチュアの時もやっぱり、そうやってまずは布団の上にいる事よりもサドルの上にいる事を多くしようと時間的にそうやっていました。
まず強靭な身体を手に入れるには、じゃあどうするかは簡単です。
負荷を掛けるしかないです。
人間の身体と言うのは負荷が掛かって初めて強化されます。
ですからヒルクライムで言うならば、例えば富士ヒルだったら富士山ですよね。
表富士・裏富士ありますが、レースイベントで実際に走る場所へ行ってレースを想定した走り方をトライするべきなんです。
そうやってコースの攻略も含めて負荷に耐える身体を作って行く、それが一番の近道です。
そんなに行けないよと言う場合は、富士山をイメージ出来るような坂道を設定するんですよ。
そこを重たいギアで走る努力をするしかないです。
強くなる為には負荷を掛ける、これが鉄則です。
練習で出来ないパフォーマンスは基本的に本番では出ないんですよね。
でもそこは人間も不思議な所があって火事場の馬鹿力がありますが、概ねそれは精神的に本番に強い人だけです。
緊張しちゃって弱い方は、やっぱり実績がない事は自信に繋がらないんですよね。
強くなる為には負荷を掛ける、非常に単純ですが効果的です」


司会「骨盤を立てた方がいいのか、寝かした方がいいのかと言う質問です」
髙橋「骨盤を立てると言うお話が出てから20年以上経つ問題なんですけれど。
骨盤を立てると直立状態と同じになり、膝が上げやすくなります。
ただし膝の関節の角度が窮屈になり、踵が下がって前に蹴り出すペダリングになってしまいます。
結論から言えば膝の角度は立て過ぎず寝かし過ぎずなんです(笑)
抽象的でわかりづらいと思うんですけれど。
さっきもお話しした様に、サドルの高さ・前後位置等の、ポジションの出し方というそこに話が戻って来てしまうんです。
骨盤を立てる場合は膝を上げやすい。
膝を上げやすい事に関して言うと、乗り始めのビギナーの方はサドルの高さは足着き性も含めて割と低目だと思います。
それゆえにサドルの低い方は概ね骨盤が立っている状況があります。
そうなって来ると、クリートの位置は浅目になっていると思います。
その方がペダリングの回転運動に違和感が少ないので、クリート位置はつま先寄りになる傾向があります。
そうすると、クリートが浅い・膝が曲がりが窮屈・踵が下がって前に踏み込む、となるとハンドルに対しては登坂時等の踏み込み負荷が大きくなった時に「引っ張る」動作になってしまうはずです。
実は、ハンドルを引っ張ってペダルを前に踏み込む動作はサイクリングではなくてボート漕ぎになってしまうのです。

自転車のペダリングのイメージとしては【雑巾掛け競争】の姿勢が理想なんです。
平成生まれの方は雑巾掛けなんてやった事がない方もいらっしゃると思いますが、
昭和生まれの方はやりましたよね。
雑巾掛け競争は手を前に置いて、雑巾を押しながら足は後ろに蹴って進みます。
自転車も足を蹴って進む動作なので、ハンドルに対して身体は前に押す動作をします。
雑巾がけ競争は骨盤を立ててやりますか?って言われたら出来ませんよね。
雑巾掛けのときに骨盤は、背骨の腰椎の角度につながっていくことで身体の蹴り足を保てます。

自転車の基本はお尻の穴を後ろに向けてサドルに座るのが基本です。
ヨーロッパのクラブチームで一番最初に教わるのがお尻の穴を後ろに向けてすわりなさいと言うそうで、この座り方が基本なのです。
骨盤を立てるとお尻の穴は下に行きます。
後ろに向けて寝かし過ぎると、首がすくんで身体も潰れます。
ですから【立て過ぎず・寝かし過ぎず】です。
骨盤を立てると言う事はサドルが低くないと出来ません。
骨盤を立てて乗っている方はサドルが低いです。
【サドルの高さは腰骨のぐりぐりの位置】を言うのを、一度確認してみてください。
案外それより高くして乗っている方はいないと思うんです。
僕自身もサドルの高さはこの場所です。
ポジションチェックした方も大体その場所にサドルを変えます。
それより高くなる方はどう言う方なのかと言うと、レースにおける走力が上がって来た方・レベルが向上した方が高い位置で関節の可動域を大きく使って自転車に乗る事が出来る様になって来ます。
今、サドルの前後位置・角度・高さを調整しても骨盤を立てて乗っている事が股の痛みが原因であるならばサドルの形状を見直すことも考慮すべきで、サドル自体が用途に合っていないことが問題なのかなと思います。
サドルが低くて、サドルの鼻が上がっていて、サドルの取り付け位置が後退している状況がマイナスのスパイラルになる事が一般的には多いです。

股の話で言うとサドルに接している部分ですが、骨盤を立てていると座骨が垂直方向になる、骨盤を倒していると前側(男性で言うと尿道)の圧力が増えます。
左右の座骨と前側の会陰の三点が三角形になって面で当たる、そう言う風にイメージして座って、サドルの角度は身体を背中や腰を丸めずに前傾させる角度を意識してもらうといいと思います。
低すぎれば骨盤が立つ、高過ぎれば前側が痛くなる、サドルの前後位置の決定の目安は前足3時の位置ペダルの軸からの垂線が膝のお皿の裏を通る様する。
大腿骨の長さは皆さん固有のものをお持ちですから、そこでサドルに対して座れる位置があると思うのです。
その状態できちんと座るべき位置に座れるか、もし座れないならばサドルを前に出してください。
そうするとペダルに体重が乗りながら身体をサドルが支えてくれる役割をしてくれます。
サドルの後ろ側の面積を広く有効に使う意識が大切です」


司会「ディスクブレーキのメリットデメリットを教えてください。油圧式との違いも教えてください」
髙橋「ディスクブレーキがロードバイクに採用されて、今年(2018年)からUCIでも解禁されて、ツールドフランスも全面解禁されました。
車輪の強度・剛性が向上してロードバイクのディスクブレーキ車が大活躍しております。
雨の中、特に雨天時の下り坂で有効性が高いです。
以前MTBでディスクブレーキが採用されていない時、雪の日に山の中に行って走るとリムに雪が付いてブレーキが利きません。
ロードバイクも雨の中を走ればリムのサイドに水の膜が出来ます。
その膜がはけてからでないとブレーキのゴムは摩擦力を得られませんので、制動力を得られません。
ディスクブレーキは車輪の外周から離れた所で制動に関わる機能だけを有する装置になりますので、効き始めが非常に早いです。
雨の日にディクスブレーキを使いたいと言うリクエストは非常に有効で実用的です。

構造的にデメリットは概ねないのですが、手入れや取り扱いの部分でメリットでない事が若干あります。
円盤状のディスクローターをブレーキパッドで挟んで止まりますが、パッドの減りが目視しづらいです。
新品は2mm位の厚みですが、ディスクパッドをディスクローターの隙間は大体0.5~0.6mm位、広いものでも0.7ミリ位です。
ですからちゃんとしたセッティングが出来ていないと、ブレーキローターをパッドで引きずる事になります。
最近のディスクロードはクイックシャフトではなくアクスルシャフトの構造がスタンダードになってきました。
アクスルシャフトの自転車でしたら、アクスルシャフトを締め込んだところの位置でディスクブレーキのローターとパッドの位置関係は概ね再現されてブレーキの引き摺り現象は回避されます。
ところがちょっと前のクイックシャフトタイプのディスクブレーキ車はハブ軸の回転角によってハブのかしぎが起こります。
車輪を挟み込む力の加減(クイックシャフトの締め付け)でもローターとパッドの位置がズレるんです。
これから買われる方はまず自転車メーカーさんもアクスルシャフトの自転車になっているはずなので、概ね問題はないと思います。
譲ってもらったとかそう言う方はちょっとそこが運用上のデメリットになるかと。
ただハブの回転角の問題ですから、ハブ軸に印をつけちゃえばいいです。
僕がよくおススメするのは、エンドのスリット逆さまに見るとハブ軸が見えますよね。
そこにペンキを塗るんです、白でも赤でも目立つ色を塗ると常にそこが裏返して表から見える様に。

逆さまで自転車を組まれる時にクイックシャフトを本締めして、正立させて車輪がガクンと動いちゃう事がないですか?
それ実は、逆さまで締めると前輪は概ねちゃんと入っている事が多いですが、後輪は変速機のバネの力で車軸が浮いてしまう事があります。
逆さまで車輪を付けるのは仮止めにしていただいて、本締めは正立させてハンドルバー及びサドルに対して加重を掛けてクイックシャフトは締め直してください。
そうすれば車軸がちゃんと装着される状態が確保しやすいです。

ディスクブレーキに関して、この作業はクイックシャフトで挟むタイプのディクスブレーキ車は完璧にやらないと今度はローターが擦るんです。
輪行した場合はディスクローターの破損及び変形が面倒で、車輪が装着出来なくなります。
ディスクローターが変形してしまうと、車輪が回らない状態になります。
ローターの保護が大切で、フレームに当たらない様にしてください。
ディスクローターは円盤状のステンレス鋼板で刃物になりますので、フレームに当たればカーボンフレームでしたら、ゴリゴリとノコギリをかけている状態になります。
フレームに対しての養生はディスクローターが接触しないように注意が必要です。

海外などに飛行機輪行される方はホイールからローターを外して管理するのも一つの方法です。
とにかくローターが歪んでしまえばディスクブレーキは機能しなくなりますので、そこだけは真剣に注意が必要です。
ではどう言う時に破損が起こるかと言えば、一例としてはある一定時間以上(飛行機での手荷物預かり時間等)の圧力が掛かると変形してしまう事があります。
いずれにしてもディスクローターの管理がディスクブレーキ運用の肝になると思います。
じゃあそんなに繊細なのかと言われれば、現物を触ってみるとわかりますが車体の運動エネルギーと乗員の体重を受け止めますのでディスクローターは結構丈夫で固いものです。
散々脅かすようなお話をしていますが、それでもディスクブレーキは素晴らしく有用で短所も含めて長所が大きく勝るブレーキシステムです。

ディスクブレーキの油圧式と機械式の比較では、ブレーキの利きが良いのは圧倒的に油圧式です。
これはブレーキの利き加減、ブレーキレバーに力を込める加減も油圧式の物の方が軽い力で済みます。
完璧に組み付けの出来た油圧ディスクブレーキシステムは現在の自転車のブレーキシステムの最高性能で、全ての短所を圧倒的な制動性能という長所が上回ります。
油圧式はオイルの圧力でブレーキキャリパーのピストンを押していますので、油圧式の最大のデメリットのエア抜きをしなくちゃいけない施工の長時間化や、劣化も含めたオイルの管理、オイル交換時の気泡を完全に抜ていく状態を前提にメンテナンスをしていく必要がありますが、いずれもディスクブレーキのシステム構築には不可欠です。

機械式は構造的にディスクローターを挟むディスクブレーキキャリパーがメカニカルに動くのですが、ロードバイク用のディスクブレーキキャリパーに対してワイヤーをつなげば、リムブレーキで今まで使っているSTIレバーやエルゴパワー等でそのままディスクブレーキを作動させられます。

自分で自転車を組まれる方は油圧式の物は確かに出来上がれば素晴らしいです。
自信がなければ機械式の物から始めてみるのでも、ディスクブレーキの良さはわかると思います。
実際に私がディスクブレーキに移行したのはMTBでしたが、当時Vブレーキで最上級だったXTRがグレードで言ったら3つ下のディオーレの機械式のディスクブレーキに全然敵わないというのがダウンヒルに行ってわかりました。
それからもうブレーキでリムを挟む時代じゃないなあと思い、MTBはディクスブレーキに完全移行しました。
ロードバイクでもいつかはディクスブレーキになるんだろうなぁとは、常々思っていましたので、実験的にフロントフォークのディスクブレーキ化を15~6年前にやってました。
チェコのチタンMTBフレームメーカーにオーダーでロードバイク用の700Cフォークを作ってもらって実験しました。
そのフォークでは、やはり長所・短所それぞれありましたが、あっと言う間にそれは今に繋がりましたね。
当時は今みたいにアクスルシャフトの概念もなく、規格も統一されていなかったところでMTBの部品を流用しましたね。
ただ現在のロードバイク用のディスクブレーキに関して言えば、MTBの方から大分技術転用されていますので、フラットマウント等ほぼ今は安定した規格で出揃って来たかなと思います。

今のMTBではブースト規格といって、前:110㎜x15㎜QR/後:148㎜x12㎜QRが29”車輪のMTBでは有効なようで、ロードバイクでは前:100㎜x12㎜QR/後:142㎜x12㎜QRの規格でとりあえず落ち着きそうです。
今後はMTBとロードバイクのディスクブレーキシステムは、ちょっと分けた規格で展開して行くのかなと思っています。
ただ、グラベルロードというオフロードツーリング向けの車体にはMTB規格がクロスオーバーしそうな予感もしますね。」

髙橋「それから、車輪についての質問ですね。
皆さんは軽い車輪が正義だって考え方があると思いますが、軽い車輪は登坂路・上り坂やスタートの発進にはメリットがあります。
ただしブルべでの平地路面・若干の下り坂、そう言う場面では少しリム重量がある車輪の方が転がりの持続性がいいです。
軽い車輪は停止からの動き出しが早いのですが、慣性が働かないので転がっていかず駆動力を掛けないと止まりたがるのです。
そこの部分を使う用途に応じて区別するのが軽い車輪の使い方です。
軽い車輪が正義と言うのは間違いです。
また、軽い車輪ではどこの部分が軽いのか、どこの部分で強度を確保しているのか、運動性にかかわる剛性はどうやって確保されているのかを理解する必要があります。

ディスクブレーキになると車輪のリムを挟みませんから、制動における熱変換の発熱からリムは解放されますので、カーボンのリムを使うメリットが大きくなります。
ですからディクスブレーキ用車輪でカーボンリムを使えば、走行上の今までのストレスはほぼ解消できると思います。
ただしお財布に関してはストレスがあるので、そこだけはハードルですね(笑)」

司会「長距離走行において800㎞くらいで首が痛くなります。ポジションを変えた方がいいのでしょうか。鍛え方はありますか?」
髙橋「大変申し訳ありませんが、僕は800㎞走った事がないので予測でしかお話し出来ませんがご了承ください(笑)
人間の身体の中では頭が一番重いです。
競輪の姿勢ではトータルで800㎞以上走っていると思うので、その経験からお話しさせていただきますが、首が痛くなる要素を回避させることの一つは鍛えて慣れるしかないということです(笑)
800㎞以上をどうやって走るか、そこが恐らく鍵になると思います。
800㎞までを走るにあたっての経過時間、恐らく前傾姿勢を保って速度が出せる状況を重視するのも一つの方法です。
快適に身体が痛くならない様にと言うのであれば、身体を起こす走り方の方が私は適正だと思います。
やはりライディングフォームを見直すのがベターだと思います。
でも身体を起こしたからと言って速度が出ないのか、と言うのもまた違って来ると思います。
最近のTTのポジションで言うと、以前よりも上半身が起きるフォームが主流です。
それは何故かと言うと、出力を上げる為にペダリングの効率を高める姿勢と呼吸がしやすい状況を作っています。

そもそも質問者さんのポジションが確認出来ていませんので、仮に乗車姿勢が適正だとして首に負担が掛かるのであれば、ハンドルバーを高く遠くして前傾姿勢を緩和する方向が正しいかなと思います。
今まで何か試行錯誤をしたことってありましたか?

どんなスポーツでも形ってあるじゃないですか。
乗車姿勢というのは、その方それぞれの現状でベターなところを目指して、レベルが上がって来るとそこからのモアベターを求めて変わって来ます。
ベストという状況は永遠のテーマで、一番強い世界チャンピオンしか実感できないものだと思います(笑)
皆さんでも経験を積めば考え方が柔軟に変わって来ます。
ですから現状のモアベターと言うところを追及して行くのは正しい解釈だと思うんです。

ダメージに関してはやはり人それぞれのものがあるので、ポジション修正と治療を一緒に考えて行くしかないのかな。
本屋やネットの世界では最大公約数的な言い方しか出来ないので、あてはまる事とあてはまらない事が多いです。
鍛えると言ったけれど、ダメージ強くなるしかないと言うのは凄く乱暴なので、ダメージを回避する事やダメージに至らない工夫をしていくことで経験値が上がりますね。
また、首以外にも部分的なダメージはその度合が違うと思うので、例えば掌が痛いと言われればパッドの分厚いグローブを付けるというのが雑誌やネットでの表現でしょ。
でも掌が痛いと言うのは、掌の圧力が高いと言う事なのでハンドルバーを下げたり遠くしたりして圧力を抜くことで痛みが緩和することも多いのです。
ポジショニングにおいては、一つのダメージはいくつかのストレスが表面化した結果なのです。

ですから首の痛みとか腰の痛みは乗車姿勢から来る事が当然多い訳なのです。
また、姿勢に関して言うと、皆さんの日常生活やお仕事の環境が関わってくることもあります。
何故かというと、身体が左右対称であるか、左右のバランスが適正であるか、そこも重要ですから、日々の身体の体調管理やご自身でのセルフストレッチをするとか。
YouTubeの動画とか観るんだったら、ヨガとかストレッチのものを観るのが有効かと思います。

疑問があれば当店で一度ポジショニングをやってみてくだされば何枚か鱗を落としてみせますよ(笑)」

お客様「凄いいいです!面倒見が良くて最高です!」(笑)
髙橋「ありがとうございます。今日はサクラを雇いました!」(爆)

司会「他にはありますか?」

髙橋「雑誌やネットではハンドルに軽く手を添える程度なんて書いてあるでしょ。
あれは嘘なんです。
ハンドルに軽く手を添える程度では、上半身の荷重をどこで支えるんですか?
背中を丸めて腰で支える事になります。
その状態でサドルに乗ってペダルに体重を乗せて踏むのは出来ないと思うんです。
そもそも膝頭に体重を乗せてペダルを踏み下ろすのですからBB軸よりも大分前に重心があります。
その重心位置の前傾姿勢では、ハンドルバーにしっかりと両腕で上半身を支えていないと頭の位置が左右にぶれるんですよ。
そのぶれを抑え込むのが腕の役割なんです。
自転車というものは四つ足の動物になるイメージを持っていただく方が分かりやすいと思います。
ご自身で膝立ちでもいいですから四つん這いになってみるといいです。
その時に手に掛かる圧力がありますよね、その部分を抜こうと思ったら背中と腰を丸めて後ろに重心を掛けなければ手の圧力は抜けません。

では掌の圧力が抜ける方法とは何か、なぜに軽く添える程度と表現するのかについてです。
大きいギアでハイスピードで走っていると、例えば53×14Tとか13Tで95回転/分とかで踏み込むとペダルに掛かる踏力の反力で上半身が起き上がる訳ですよ。
そうすれば手に掛かる圧力が、手を軽く添える程度と言う状況になります。
ただそれだけなんです。
ですからその状況にない20~30㎞/hでの走行の場合は、登坂時でもない限りその「手を添える程度」になりません。

その時に掌の圧力が痛い場合は、手がつっかえ棒になっている事が多いです。
ですからハンドルを遠くにする、要は肩から掌のリーチを増やす動作をしてあげればいいのです。
手が痛い方は概ねハンドルの高さが高い方が多いです。
その状態で「手を添える程度」なんて意識で姿勢を作ったらエビの様に背中と腰が丸まって首まですくんで満足な呼吸が出来なくなってしまいます。
皆さん、長距離と言うとハンドルバーは高い方が楽なんじゃないかとイメージされていませんか?
もし興味を持てくださったなら勇気をだしてステムの高さを1~2㎝低くして乗ってみてください。
やってない事をしてみると扉が開く事もあります。
そこはちょこっとトライしてみてください。

実は競輪の姿勢もきちんと体重がハンドルに乗っているんですよ。
どう言う時にハンドル荷重が抜けて行くのかと言うと、全力で踏み込んでいる時です。
その時でなければ、ハンドルバーに対しての圧力は抜けて来ないんです。
全力で踏んでいる時にどうなるかと言うと、ハンドルを抱え込む様にして押しているんです。

長距離の方が意外とやらないのはスプリントの練習ですよね。
もっともスプリントをやる必要がないので。
でも実はね、固定ローラーとかローラー台を持っている方はちょっと普段の練習で取り入れてもらいたいのが、5秒間の全力ダッシュです。
実際ご自身の中で全力でペダルを漕ぐ事ってした事がありますか?
例えば5秒間で55秒インターバル、1本1分で終わります。
それを連続で5回、5分で終わります。
最初の1~2本は身体がちゃんと動かないかもしれません。
3本目位から汗がじっとり出て来て、4本終わる頃にはやるんじゃなかったと思います。
5本目終わる頃には、やり切った感・達成感を感じます。
今まで足の運びに関して、意識的にやっていた事が無意識に出来る様になる現象を確認出来るはずです。
その時にお尻がポンポン跳ねる様でしたら、サドル位置が合っていないとかクリートの位置が合ってないとかの状況があります。
全力でもがいた時にサドルのどこに座るか、蹴り足の動作になるのでサドルの後ろに座る人はいないんです。
ペダリングでは、よく引き足とか言いますけれど、動作としては引き足ってないんです。
踏み足が下死点で後ろに抜けてハムストリングの収縮で勝手に上がって来るだけで引き足なんて関係ないんです。
人間の身体は、腕は肩関節でグルグル回るけれど、足は股関節でもどこでもグルグル回りません。
足は上下にしか上がりません。
回る動作と言うのは、足の上下運動がクランク装置を介して円運動を表現するに過ぎないのです。
それがチェーンを引っ張って後輪を回して行くに過ぎない。
ですから、いかに効率良く上下に踏むか。
早く踏めば早く車輪が回ります。
自転車はそれなんです。

まずダッシュ練習をやってみてください。

ブルべでダッシュする必要はないので、そこではしなくていいですよ(笑)
普段の練習でペダリングを確認するのにダッシュやスプリントの練習をするのが一番効果があります。
リクエストがあれば、ポジションセッティングでさせていただきます!
バンバンもがかせますので、どんどんリクエストしてください。
必要な方は私からご案内させていただきます。

実走だとなかなか環境もあると思うので、スプリント練習はタイミングが難しいと思います。
僕らが実走でもがく場所はどこかと言うと、どんぶり坂(下って上る様な所)でよくダッシュ練習をしていました。
下りで加速を付けて、そのスピードで登坂の負荷をそのまま我慢する。
尾根環は信号のタイミングを計ればやりやすいと思います。
ただし、スプリント練習でインナーは封印ですよ。
負荷を掛ける練習ですから、イメージはグングンという感じでクルクルはNGです。

あとはダンシングに関して興味があると思うんですけれど、苦手な方もいらっしゃると思います。
苦手な方は案外ハンドルが高かったりサドルが後退し過ぎてたりして、ダンシングの姿勢に移行するのによっこらしょって一呼吸も二呼吸も動作を加えないとならないですね。
コツと言うものもあります。
それが先程お話しした形、自転車における形(乗車姿勢)っていうところから動きがスムーズになる事が多いです」

司会「次の質問は、手組ホイールで組み甲斐のあるホール数は幾つですか」
髙橋「手組車輪のスポークの本数に関して言えば使われる用途に応じてなので、正直言えばご注文された方に対していい車輪でしたと言われるときが達成感になりますね。
ハブやリムの製品上の問題から、穴数があまり多過ぎるとか少な過ぎるとか言うものは作れません。
例えば完組で言えばシマノのホイールはフロント16本・後ろが20~21本、こう言うものがほとんどですし、カンパニョーロでもフロントが19本・後ろは21本。
手組ホイールが完組ホイールと大きく違うのは、スポークを交差させて組み上げていくのが特徴となっています。
もちろんラジアル組でスポークを放射状に組むやり方も手組でも出来ますけれど、手組車輪の材料で例えばシマノのハブは基本的にはラジアル組に対応していません。
ラジアルで組んでハブのフランジが割れてしまったら、保証の対象外になりますので。
それはやらないでくれと言う状況です。
一部エアロスポーク仕様のデュラエースのハブはラジアル組が可能な物もあります。
シマノのハブに関して言えば、基本的にラジアル組みはご法度です。
あとは高い物でクリスキングがありますけれど、この辺はラジアル組がOKなフランジの厚みとスポークホール数も穴のあけ方も問題ありません。
車輪に関してブルべ的な走りで言うなら、やっぱりスポークの本数が多い方がメリットはあると思います。
スポークの車輪は組んだ事がある方ならイメージ出来ると思いますが、リムをスポークで引っ張ってバランスを取っています。
それは完組車輪も同じです。
スポークで引っ張っている所のリムの位置と言うのは、内側に引っ張られて変形します。
厳密にいえば16本のスポークの車輪は正十六角形です。
スポークで引っ張られてるニップルの箇所と言うのは、必ず引っ込みますからニップルとニップルの間は出っ張る形になります。
24本のスポークであれば正二十四角形、32本であれば正三十二角形。
ではどちらが丸いの?と言えば、スポークの多い方が丸いですよね。
スポークの本数が16本と32本、倍の本数の差があります。
同じ縦剛性の車輪を作るのであれば、単純に考えればスポークのテンションが半分の強度で済みます。
ただしラジアルパターンでスポークを放射状にスポークを張った状態でその状況になりますから、せっかく本数が多いのにいたずらに固める車輪を作る必要はありませんから、基本的な快適性と剛性、操作性、等と必要な特性を振り分けられるのが手組車輪のメリットです。

手組車輪のデメリットは、一つは専用設計で各々の作品を作っていません。
総重量面で劣ります。
総重量とは、手で持った重量です。
車輪と言うのは、タイヤが装着されて転がって初めて車輪としての機能を出します。
外周部の重量、リムの重量がバランスのいい所、用途に合った重量である事、そこが車輪としての使用感の良さにつながって来ると思います。

どのスポークの本数が組み上がった時の達成感がりますか?と言う質問ですが、僕個人ではやっぱり車輪を組んでいて満足感が達成出来るのは36本の競輪の車輪を組んでいる時ですかね。
なぜかと言うと、競輪の車輪は競輪でお金を賭けるお客様の現金がリアルに乗って来ます。
ですからレース中に車輪のスポークが折れた・選手が使うに耐えない状況になるのはそれはご法度なんです。
特に年末の競輪GPは優勝賞金1億円を超えますからね。
その一発勝負のレースに出る車輪を過去2年連続で作った事があります。
一回のレースで売り上げが70億位動く時もあるんですよ。
恐ろしいですよ、トラブルがあるような事になるとリアルに選手の生活とか影響するし、G1やGPでお客様の沢山のお金が乗る車輪は一番緊張するし、選手からお墨付きを貰えれば達成感は大きいです。
それで優勝してくれたら尚の事嬉しいです。
今の所、グレードレースで言えば私の作った車輪はG2レースでは優勝経験があります。
G1は決勝2着まで、もう一息なんですよね。
数年前に引退した茨城の長塚智広君(アテネオリンピックでチームスプリント銀メダル)ですが、彼が選手を引退する間際まで競走用の車輪を頼まれてお世話していましたが、彼に「他の車輪は使えない」と言ってもらえたことは、私としてはお世辞でも凄く励みになりました。

実は競輪の部品はタイヤも含めて全て認定部品なんですよ。
この部品しか使えないですよと言うのがあるんです。
車輪に関して言うと、皆さん達が使っている車輪の方がリムの強度とか剛性が非常に高い物です。
競輪では接触等が原因の落車で自転車が壊れてしまう事や選手が折り重なって転ぶ事があります。
何で競輪は鉄フレームなの?カーボンじゃダメなの?と言うのは、カーボンは落車で割れます。
割れて、切り口が刃物になります。
ですから競輪のフレームは鉄のフレームなのです。
鉄のフレームもパイプの厚みが薄いと割れる事もあるので0.5㎜以上と言うパイプ厚の制約があります。
これは、落車の際に鉄フレームが折れ曲がることで二次被害を防ぐ安全性の確保を担っています。
パイプの太さもきちんと認定を取っている物を使っています。
フレームのラグ等の構成部品も然りです。
車輪は落車の際に一番被害が大きいので、リムが折れて切り口が開いては絶対にダメなのです。
曲がってクシャっと潰れる分にはいいのですが、折れて破断すると折れた切り口が刃物になるので、ちょっと想像すると怖いんですけれどね。
もし、脇腹に刺さったら突き抜けちゃいますから、とても危ないですよ。
そういう事がない様に、柔軟性のあるアルミ合金で作られている特殊なリムなのです。
それを選手が全力で踏んでも耐えれらる車輪に組み上げないといけませんから、それも同じ材料(部品)を使って、選手それぞれ体重も戦法もスポークテンションの好みも脚質も違いますので、それぞれに今回のはすごくいいです!と言われた時は大変やり甲斐を感じますね。」

Q「競輪の自転車は凄く軽く見えますけれど、完成車で何㎏ありますか」
髙橋「完成車で8㎏位あります。
今のロードバイクの方が軽いです。
競輪の自転車は全然軽くないです。

競輪の自転車は認定部品を使わなくてはならないので、軽い自転車を作るのには小さくしないとなりません。
ただし小さい自転車は窮屈だったり、ステムを伸ばせば揺れたり、力の伝達のロスがない様に作っていかないとなりません。
じゃあ固ければいいのか?と言えば、固いと一回しか踏めません。
競輪と言うのは大体3~4回踏み直すので、何回も踏めると言う自転車を作る事も重要になって来ます。
もちろんトレーニングは当たり前ですよ。
トレーニングしての話です。
そこに選手個々のノウハウがあります」

Q「慎治さんはどこでトレーニングしていましたか」
髙橋「僕は基本的には青梅街道・奥多摩街道・滝山等でやっていました。
あとは吉野街道で古里から小河内ダム、青梅街道をそのまま帰って来る。
グランドはあまり行かなかったですね。

Q「タイヤ引きは?」
髙橋「タイヤひきはグラウンドの中ですね。
街道でタイヤひくと、車に踏んずけられるとすっ飛びますから。

東京オリンピックの練習バンクだった施設が八王子の多摩川沿いの総合公園の中にいまだにあります。
真っ平らなグラウンドなので、僕らは「ひらバンク」と言っていました。
ちょっとだけ傾斜があって、全力で走ると内側のペダルを引っ掛けちゃう位の緩いお皿みたいなグラウンドがあります。
そこで夜にフェンスを乗り越えてやっていました。

当時は昼間行くとインフィールドでサッカーをやっていたりするので、夜暗くなってから練習に行っていました。
僕が選手を目指した二次試験の前に、そこで夜に原チャリを中に入れてバイク誘導をやってもらっていました(笑)
その時の原チャリ(パッソル)は全開でスロットルを捻っても50キロ位しか出ないので、48x14Tで捲れるんですよ!
2コーナーからバックストレートで捲って行くと3コーナーで曲がれるかな?曲がれるかな?と思いながらギリギリで、そのお陰でペダリングがキレイになりましたよ(笑)

車輪は丸さを強調した車輪は転がりもいいです。
スポークの長さも長い方が快適性がいいです。
そうすると36本の8本組み・競輪の車輪が一番。
ちょっと難しい話になりますが、車輪の強度は剛性を生み、剛性は壊れにくいと言う事で、壊れると言う現象は何かと言うと、スポークが折れる・リムが潰れると言う事になります。
強度の部分では8本組(4クロス)っていうのは、スポークのハブフランジからの向きが接線方向になるので力学的にも強いのです。
競輪の規格というのは考え尽くされて実績のあるものなので、いまだにそこから大きな変更がありません。
競輪の歴史も70年になります。
戦後の復興を支えた地域財政の健全化を目指した事業なので。
今は地域財政が不健全な所はないので、そう言う意味では社会的には達成された事業でもあります。
いまだに役所事なので続けてやっていますが、そこにスポーツ性を見出せるように働きかけてオリンピックに採用された種目でもあります。

現場の選手達は、今は凄くスポーツ性が高まっています。
僕が若くてデビューした時は先輩方が囲碁将棋をやりながら、そこでちょっと待ってろ!って言って、ぐるっと競輪レースを走って来て、よし!次やるか!なんて言っている先輩達が沢山いました(笑)
今はそんな選手はいませんからね。

あとはレース終わってお風呂上がって宿舎に缶詰ですから、食事位しか楽しみがないんですよ。
夜は酒飲む組とご飯だけの組と分かれて、飲むメンバーは食堂が始まる5時半から終わる8時半まではびっちりいます。
毎晩宴会みたいなものでした。
でも不思議と前夜にお酒飲んでる時の方が力が出ましたね。
ストレスが発散されるからですかね(笑)

ちょっと脱線しましたが、車輪に関しては今後は色々と用途によって仕立て方が変わってくると思います。
ロードバイクのディスクブレーキ関連もあると思いますので、更に多様化してくると思います。
ご興味があれば、ご相談ください。
ありがとうございます。

今日も拙い話でしたが、聞いてくださりありがとうございます。
皆様はロードバイクを基本にお乗りになっていると思いますが、例えばロードのシューズでロードのペダル使っているとか、ロードバイクだからこれじゃなきゃいけないとか杓子定規で考えている方がいらっしゃると思いますが、もっと自由でいいと思います。
ロードバイクでSPDペダルの歩けるシューズにしてもいいし、MTBにドロップハンドルを付けたって良いと思うんですよ。
自転車がもっともっと自由で、自分が必要だな、これがいいなっていう物を具現化出来るのが自転車の良さだと思います。
タイヤが細いのが不安でしょうがない等、そう言う場合は太いタイヤが装着出来る状況を作ってみてもいいと思うんです。
ディスクブレーキの自転車ならばタイヤを太くしてリムの径をちょっと小さくする事で外径を変わらずに作れば、メーターの数字も変わらなかったりとかそう言う事も出来ます。
とにかくもっともっと自由に考えてみてください。
サドルも何用等関係ありませんから、ハンドルバー・サドルと身体に触れる部分をストレスのない快適性を実感出来る物をどんどん取り入れる工夫はしてみても良いと思います。
そんな自分の考えた事を具現化出来る乗り物は自転車しかないと思いますよ。
オートバイでも車でもやれると思いますけれど、コストがべらぼうに変わって来ます。
概ねオートバイで自分の考えた物は500万以上掛かりますし、自動車で言えば3000万以上掛かります。
自転車は一般の方が楽しめる理論的な乗り物だと思いますので、これからも安全に楽しんでください。

完組のホイールのメリットとして考えられるのは転がりやすさです。
縦の転がりは縦剛性を高く設定しているので、真っ直ぐ転がっている感覚が完組の車輪は凄く強いと思います。
ただライダーが元気なうちはそれでいいかもしれませんが、路面が悪くなったりライダーの疲労が溜まって来たりすると、完組車輪の転がりと固さというのがストレスになる場合も出てきます。
最近は完組車輪もワイドリムになって太いタイヤを使う事が当たり前になってきましたが、23C標準から25C標準に変わったのも快適性の向上だったりします。
実際は外径が増えたら一転がりする距離が増えるとか、タイヤの幅が増えるからコーナリングのグリップ力が増えるとか、運動性能の側面でもプラスの部分はあるんです。
デメリットは重量を気にされる方はタイヤの重量が増えますが、増えた所で10g程度ですけれどね。
ただ、10gに拘られる方もいるのは確かなので、そこは各々で。

完組車輪のメリットはいつ買ってもある一定以上の性能が確保されている事。
なぜこうやって完組車輪が世の中に当たり前になったかと言うと、自転車の性能は車輪に起因する事が非常に大きいです。
車輪の性能が画一的に出来ていれば、自転車を設計して性能としての製品を作り上げる時に特定のレベルを設定する事が出来ます。
それが手組車輪だと、その車輪を組んだ人の技量によって自転車の性能が上下してしまう訳です。
メーカーとしては出来るだけ性能の均一性をはかりたい目的もあって、完組車輪が主流になっていると思います。
実際に僕がこの内容を聞いた訳ではないですが、考察するにこれがが流れとしてあるのかなと。
なぜそれに至ったかと言うと、競輪選手の身体のセンサーは本当に敏感で、スポークの張力・テンションの管理を選手個々にしているのですが、その張力が数パーセント下がっただけで緩んだと言います。
ですから市販の自転車の性能を確保するということは、今の完組車輪の最大の使命・命題なのかなと思います。
対して手組車輪はカスタムメイドでオーダーで作る内容だと思っていただければ分かり易いと思います。
ブレーキが不得意な方、体重が軽い方・重い方、反応のいい車輪が欲しい、乗り心地のいい車輪が欲しい等、色々なリクエストがあると思います。
その感覚を満足させる様な状況は大概作れるのかなと思っています。」

(以下、雑談)

※上記の表現や思考、理論等は投稿日現在によります。